厳密にいえば、「無修正=違法」ではない

2022.03.07

厳密にいえば、「無修正=違法」ではない

AV作品では、必ずモザイクがかけられています。
そして、裏モノや投稿動画などで時折見られる無修正作品は、違法なものとして摘発されることがあります。
しかし、厳密にいえば無修正は違法というわけではないのです。
それはなぜか、解説します。

 

 

なぜ、無修正が違法とされているのか

そもそも、無修正が違法とされているのは何故でしょうか?
また、無修正というのはどういったものでしょうか?
違法の根拠と、無修正の定義について解説します。

 

無修正というのは、そのままだと「修正していない」という意味になります。
つまり、何らかの修正を加えている場合は、本来なら無修正と言えなくなるのです。
映像を編集した時点で、本来の意味での無修正ではなくなるでしょう。

 

しかし、AVにおける無修正はこれと若干の違いがあり、局部を露出してモザイクを入れていないものが無修正として扱われます。
たとえ顔にモザイクをかけていても、性器が見えていれば無修正です。

 

では、なぜそれが違法となるのでしょうか?
その根拠となるのは、刑法にある「わいせつ、強制性交および重婚の罪」にある、174条の公然わいせつ罪と、175条のわいせつ物頒布の罪です。

 

公然わいせつ罪は、不特定、もしくは多数の人の面前で、わいせつな行為をする行為です。
以前、女性ユーチューバーがFC2動画で性行為を無修正配信したことで逮捕された際は、この公然わいせつ罪に問われています。

 

こういった動画は、有料で配信されていることもあり、視聴者は限られています。
それでも、公然わいせつ罪にはなるのです。

 

AVとの違いは何かというと、1つは無修正であること、もう1つは生中継での配信であることです。
公然わいせつ罪の定義でいえば、たとえ性器が映らないように隠していたとしても、性行為を行ったという時点で罪に問われることになるでしょう。

 

もう1つのわいせつ物頒布というのは、わいせつ物を流通させるなどの行為です。
要するに、無修正の映像を販売すると、わいせつ物頒布という罪になるのです。
その他、無修正映像を公開するとわいせつ物陳列罪、販売目的での所持はわいせつ物販売目的所持罪に問われます。

 

これにより、無修正映像は配信や流通、公開、販売目的での所持が罪に問われるようになりました。
その他、平成23年の法改正によって国内から海外サーバー経由での配信や、海外のサーバーにアップロードして国内に流通させることも罪に問われるようになっています。

 

公然わいせつ罪になると6か月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金若しくは交流課科料に処されます。
わいせつ物頒布材の場合は、2年以下の懲役か250万円以下の罰金、あるいは科料に処されるか、懲役及び罰金を併科されることになります。

 

 

無修正はわいせつに当たる?

無修正が違法となるのは、無修正がわいせつに当たるからです。
しかし、本当に無修正はわいせつなのでしょうか?
わいせつの定義について、確認してみましょう。

 

わいせつというのは、以下の3つの要件を満たすもの、とされています。
・徒に性欲を刺激・興奮させること
・通常人の正常な性的羞恥心を害すること
・善良な性的道義観念に反すること

 

この要件は、1957年に示されたものです。
そして、現在の裁判に至るまでそのまま使われています。
そこで重要視されるのが、性器や性行為が非公然性であるべきという原則があることです。

 

要するに、性器が無修正ということや本番行為が含まれる内容であるかどうかが問題となります。
しかし、芸術作品の中には性器を露出したものもあり、医学書などには公然と性器や性行為について書かれているのです。

 

そういったものは、わいせつ物には当たりません。
わいせつ性の判断には、その記述内容が文書全体の一定以上の割合を占めていなくてはならないのです。

 

その他にも、芸術性や思想性が高く十分に性的刺激を緩和していると認められた場合も、罪にはなりません。
そして、女性器そのものをわいせつ物とするのは、よくないことというフェミニズム思想が出てきています。

 

そのことから、無修正だからと一概に違法として扱うのは、あまり望ましくないと思えるでしょう。
それでも、現時点では無修正がわいせつとみなされ、罪に問われるということは忘れてはいけません。

 

女性器を立体的に表現した美術作品がわいせつ物陳列罪に問われ、無罪となったのは無修正が認められる可能性の示唆ともいえるでしょう。
しかし、その一方で無修正動画を投稿していた人は次々に逮捕されているので、今すぐ無修正を違法ではなくするというのは、難しいといえます。

 

 

まとめ

無修正動画は、以前から違法なものとして扱われていました。
しかし、近年では必ずしも無修正が違法とは言えないのではないか、という意見も増えてきて、無修正の中でもわいせつ物としてみなされない条件も注目されています。
しかし、現時点では無修正動画が違法なものとして判断されるのは確かで、何人も逮捕されています。
違法ではない可能性があるからといって、安易に無修正動画を販売しないよう注意しましょう。